立憲民主党の小川淳也政調会長は12日のフジテレビ番組で、家計の値上げ許容度が高まってきていると発言した日銀の黒田東彦総裁について「国民感情から随分遠いところにおり、アベノミクス下の格差拡大への感度が鈍っている。そろそろ引き際をお考えになった方がいいのではないか」と指摘した。
物価高騰が続く中、大胆な金融緩和を柱とする日銀の政策の是非が参院選の大きな争点になるとの認識を示し「物価が上昇しても、それ以上に賃金を上げないと良い循環にならない」と強調した。
黒田総裁は講演で「興味深い調査結果があるんですよ」と、東大大学院の渡辺努教授らによる調査を紹介した。
「馴染みの店で馴染みの商品の値段が10%上がったとき、あなたはどうしますか」との質問に対し、最新調査(今年4月22日~5月9日)では「他店に移る」が前回(昨年8月)より減少。これを根拠に黒田総裁は「家計の値上げの許容度も高まってきている」と主張したのだ。
ところが、公開されている調査結果を見ると、同じページに値上げをそのまま受け入れない家計の姿が示されている。
「その商品を買い続ける。ただし、買う量を減らしたり、買う頻度を落としたりして節約する」が、「よく当てはまる」と「当てはまる」を合わせ、約7割に達しているのだ。昨年、一昨年の調査より増加している。
帝国データバンクが9日までに発表した価格転嫁の動向調査によると、仕入れコスト上昇にもかかわらず、全く値上げできていないとする企業が15・3%を占めることが分かった。業種別では、競争が激しく顧客離れの懸念があるトラック運送など「運輸・倉庫」が特に厳しい環境だった。全体では100円のコスト上昇に対し価格への反映は44・3円にとどまった。
一方、「全て価格転嫁できている」は6・4%、「8割以上価格転嫁できている」は15・3%、「5割以上8割未満」は17・7%だった。
運輸・倉庫は全く値上げできていない企業が31・8%と、業種別で最も割合が高かった。