自民党の安倍晋三元首相は9日、大分市の会合で、日銀が市場を通じて政府の国債を買い入れていることに触れ、「日銀は政府の子会社だ」と述べた。
安倍氏は「(政府の)1000兆円の借金の半分は日銀に(国債を)買ってもらっている」と指摘。「日銀は政府の子会社なので60年で(返済の)満期が来たら、返さないで借り換えて構わない。心配する必要はない」と語った。
安倍晋三元首相(67)が5月9日、大分市内の会合で口にした発言が物議をかもしている。
「日本人は真面目だから、経済対策を実施すると、たくさん借金しているが大丈夫かと心配する。政府の財政を家計にたとえる人がいるが、日銀とともにお金を発行できることが、政府と家計の大きな違いだ。家計でやったら偽札になってしまう。
1000兆円ある政府の借金は、半分が日銀が買っている。日銀は、政府の子会社だ。60年の(返済)満期が来たら、借り換えても構わない。何回だって借り換えていい。世界中の中央銀行と政府の関係はそうなっている。心配する必要はない」
立憲民主党など野党は、日銀の独立性、中立性の観点からこの発言を問題視し、追及する構えを見せている。
安倍政権が進めた「アベノミクス」では、国の借金である国債を日銀が大量に買い入れることで、デフレ経済の改善を目指した。その結果、国の借金が大きく膨れ上がったことについて、「将来への大きなツケとなる」と、一部の識者が批判してきた。
ただ、最近では、自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはないという、MMT(現代貨幣理論)を唱える人もいる。
日本銀行は、日本国政府から独立した法人とされ、公的資本と民間資本により存立する。資本金は1億円で、そのうち政府が55%の5500万円を出資し、残り45%にあたる約4500万円を政府以外の者が出資する。日本銀行法により日本政府の保有割合が55%を下回ってはならないこととなっている。日銀の発行する出資証券(株式会社における株式に近い)は、東京証券取引所のJASDAQ(JASDAQスタンダード)市場に上場していたが、市場再編に伴い、2022年4月4日からプライム市場に上場している。
2015年(平成27年)3月末日時点における政府以外の出資者の内訳は、個人40.1%、金融機関2.2%、公共団体等0.2%、証券会社0.0%、その他法人2.5%となっている。株式会社における株主総会にあたる、出資者で構成される機関は存在しないことから、出資者は経営に関与することはできず、役員選任権等の共益権は存在しない。一方で自益権に相当する剰余金の配当は、払込出資金額(1株の額面金額に相当、1口あたり100円)に対して年5分(5%)以内に制限されている。もしも日本銀行が解散を決議した場合でも残余財産の分配は出資者にはなく、日本銀行法によりすべての財産は国に帰属することになっている(第9章 第60条2項)。
国の行政機関ではないものの、その金融政策は行政の範疇に属すると考えられ、独立行政委員会に準じる存在と位置づけられている。物価の長期的な安定はマクロ経済の観点から重要であるが、政治部門は短期的な手法をとることを選好しがちであるため、長期的な公益確保・政治的中立性の観点から自主性・独立性が認められている。
満期30年、50年、さらには100年といった超長期の国債を発行する国が増えている。超低金利に乗じて資金を借り入れるのが狙いだ。投資家側も、わずかでも利回りが高ければリスクを無視して買うのにやぶさかではない。
ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州(NRW)は5日、満期100年の債券を発行して20億ユーロを調達した。フランスは18日、近く満期50年の国債を発行すると発表した。同国がこの年限の国債を新規発行するのは2016年以来のことだ。
メキシコとインドネシアも50年債を発行するなど年明けから動きは活発で、今年の超長期債の発行額は16年の水準に近づく可能性がある。この年はユーロ圏各国による満期30年以上の国債発行総額が190億ユーロと、過去最高に上った。
多くのユーロ圏諸国は10年の債務危機以来、低金利を背景に国債の平均残存期間を伸ばしてきた。
しかし市場全体から見ると、超長期債は依然としてほんの小さな割合を占めるにすぎない。ラボバンクのデータによると、昨年はユーロ圏諸国の国債発行額がグロスで推計1兆2300億ユーロだった中で、超長期債は約146億ユーロにとどまった。
しかし投資家側にとっては、超長期債にはリスクがある。何より怖いのは、インフレが頭をもたげて債券価格をむしばむことだ。年限が伸びれば伸びるほど、そうしたデュレーションリスクも大きくなる。
しかし世界中にマイナス利回りの債券が約17兆ドルも存在している現実を前に、ファンドマネジャーは数ベーシスポイント(bp)でも利回りの高い資産を追い求めている。そこで解決策の一つが、購入する債券の年限長期化になる。例えばフランスの既発国債で見ると、10年債の利回りがマイナス0.3%なのに対し、50年債ならプラス0.5%が得られる。
あるバンカーは「投資家は利率1%のNRW州債を買いたいわけではないが、超長期債を買わざるを得ない」と説明する。
<100年債の発行相次ぐ>
ウォルト・ディズニーやコカ・コーラといった企業までもが、これまでに100年債を発行した実績がある。ソブリン債を見ても、メキシコは10年に初めてドル建てで100年債を発行しており、オーストリアが100年債の発行を始めたのは17年だ。
オーストリアが昨年発行した100年債は、応募額が発行額の約9倍に達した。
ペルーとイスラエルも昨年100年債を発行。アルゼンチンが17年発行の100年債でデフォルト(債務不履行)を起こした事実にもひるまず、投資家は積極的に応募したもようだ。モルガン・スタンレーのアナリストノートによると、新興国市場では近年、債券供給総額に占める超長期債の割合が増えて3分の1近くに達した。
しかも年限は35年以上へとさらに長期化しており、昨年の35年以上の新興国ソブリン債発行額は推計240億ドル相当と、19年の8倍以上に増えたという。
欧州で100年債を発行する国が増えると予想するアナリストはほとんどいない。よりなじみの深い50年前後にとどめるとみられ、スペイン、イタリア、ベルギーなどがこうした年限の国債を発行しそうな候補国だ。