fc2ブログ

アベノミクスで、なぜトリクルダウンが起きなかったのか?



ブログランキングに参加しています。応援のクリックをお願いします。




経営コンサルタントの日沖 健 氏が2021年10月25日の東洋経済オンラインに、"日本だけが低賃金から抜け出せない2つの理由"と題する記事を書いていた。


 〈元記事〉
日本だけが「低賃金から抜け出せない」2つの理由


トリクルダウンの解説の部分を引用します。

 
労働者に賃金を払うのは(主に)企業です。企業が労働者により大きな賃金を払うには、まず企業がより大きな利益を獲得しなければなりません。そのためには、国家経済の成長が必要です。
「国の経済が成長→企業の収益が拡大→労働者の賃金が上昇」というのが、一般的な賃金上昇のロジックです。2013年から現在まで続いた安倍晋三政権・菅義偉政権のアベノミクスは、このロジックによるものでした。
「トリクルダウン(水がしたたり落ちる)」と言われるとおり、金融緩和で円安誘導すれば、輸出型の大手企業が成長し、その恩恵が関連する中堅・中小企業に及び、労働者の賃金が、上昇して家計が潤う、と想定されました。
しかし、大手企業の収益は改善したものの、賃金水準は上昇せず、結果的にトリクルダウンは起こりまでんでした。原因は色々ありますが、社会や労働市場の構造問題が賃金上昇のロジックを阻んだと思われます。

 

アベノミクスで、トリクルダウンが起きなかった解説としては、一般的なものです。よく書けた文章です。



 第二次安倍晋三政権でのアベノミクスは、日本を復活させることはなく、日本経済は横ばいに終わった。その間に、欧米先進国より豊かになり、韓国や台湾といった国々は急成長が続いた。2000年以降の小泉純一郎政権の小泉改革と第二次安倍晋三政権のアベノミクスで、日本は先進国から転落した。韓国のような中進国よりも年収が低くなった。日本だけ、トリクルダウンは起きなかった。

その理由については、筆者の見解は異なる。「社会や労働市場の構造問題」だとは思っていない。


第二次安倍晋三政権が発足したのは2012年12月26日で、辞任が2020年9月16日です。この間の経済政策をアベノミクスと呼んでいる。

 

では、この時期の日本国内の自動車市場を見てみます。自動車産業は日本のGDPに与える影響は非常に大きい。日本経済を代表するような経済指標の1つです。

 

2013年の日本の自動車生産台数は、963万0181台です。国内販売台数が537万5513台で、輸出台数が425万4668台です。安倍政権発足当初の実績です。

 

2020年の自動車生産台数は、921万5476台です。国内販売台数が461万4565台で、輸出台数が460万0911台です。

 

見たらわかるように、自動車生産台数が減少している。円安政策にもかかわらず、自動車輸出は微増でしかない。国内自動車販売台数も2回の消費税増税で減少した日本国内で生産された自動車は減少している。

 

アベノミクスで戦後最長の景気回復と政府は発表している。そんなものは役人が発表した経済統計の中にしか存在しない。最大の問題は日本の役人が作成するGDP統計の信憑性が疑問視される状態で、日本経済の本当の実態がわからなくなっていること。

 

では、軽自動車も見てみる。2013年の軽自動車販売台数は197万9446台です。2019年の軽自動車販売台数は191万0346台です。軽自動車だけを見ても、販売台数は減少している。価格が安い商品も、売れているわけではない。

 

2019年はコロナの影響がほとんどない年です。コロナの影響が出るのは2020年以降です。純粋にアベノミクスの期間における自動車生産の推移を分析してみた。国内の自動車生産台数(国内販売+輸出)が減って、自動車産業で勤務する人の給料が上がると思うか?

 



この期間にトヨタ自動車などの自動車メーカーは過去最高の営業利益を出している。国内での自動車生産が減って過去最高の経常利益になる理由は、アメリカ市場などでの販売が好調だからです。

 

これは日本のアベノミクスの成果ではない。海外が好景気なのに、日本国内は販売不振の不景気だった。

トヨタ自動車やホンダ技研はアメリカに現地工場を所有している。アメリカ人がアメリカで生産し、アメリカ人がアメリカで販売した利益。

アメリカ人の労働者に対して支払われるもので、日本人労働者に支払われるお金ではない。会社が海外で過去最高の営業利益をあげたからと言って、日本人労働者の給料は上がらない。日本人労働者の賃金を上げるためには、国内での自動車生産台数を増やし、国内で自動車を販売するか、自動車を輸出するかです。

 

日本国内の自動車市場は、2度の消費税引き上げ販売不振です。輸出を見てみると日本からの自動車輸出は425万4668台(2013年)から460万0911台に増えただけ。6年間に輸出が34万6243台増えただけです。年率に換算して1.35%にも満たない増加率です。こんな輸出台数で2回の消費税増税による販売減少をカバーできるわけがない。実際、国内自動車生産台数は減少している。これで、給料が増えるわけがない。

 

第二次安倍晋三政権は、左派の批判とは異なり賃上げに熱心な政権だった。企業に対して賃上げを要求し「官製春闘」と呼ばれた。最低賃金の引き上げにも熱心だった。政治家が労働市場に介入してくることへの是非はともかく、賃上げに政治圧力をかける政権だった。安倍政権における実質賃金はマイナスに終わった。多少の賃上げはあっても、日本のインフレ率を下回った。労働組合が支援する政党が与党であっても大同小異の結果にしかならない。なぜなら、国内自動車生産台数が減少して、日本の自動車会社に勤務する労働者の賃金が上がるわけない。

 

日本の労働生産性は低いと言われてきた。労働生産性は以下のような式で計算される。

 

労働生産性=付加価値/労働投入量

労働生産性=GDP/労働投入量

 

労働生産性は、労働者1人が1年間に生産した付加価値(GDP)です。企業経営において付加価値やGDPに相当するのが、粗利益や限界利益です。GDPの場合は国内で生産された粗利益です。これが重要なポイントです。

 

国内の自動車生産台数はGDPにカウントされるが、海外で生産された自動車は日本のGDPには含まれない。日本の自動車メーカーの海外生産や海外での売上がいかに増えようとも、日本のGDPには寄与しない。

 

日本国内は2度の消費税増税で不況であったら日本のGDPは増えない海外市場が好景気ならば自動車業界は過去最高の好決算になる。昭和の時代は、日本から海外に自動車を輸出して、日本の労働者も海外市場の恩恵にあずかれた。しかし、今は自動車の輸出がほとんど増えることなく、国内での自動車生産は減少している。賃上げなんてできる状態にないのに、格差社会だ!とかトリクルダウンが起きない!と騒いでいる。

 

国内が不況で、利益をあげるのは、海外市場に投資した人や会社です。アメリカ人がアメリカで自動車を生産し販売した利益を、日本人労働者に支払う必要はない。海外で稼いだ利益を海外に再投資すると、内部留保(利益剰余金)が増える。日本のような資本主義国においては、内部留保(利益剰余金)は株主の私有財産であって労働者の所有物ではない。法廷で要求できないような不当な要求を賃上げ運動という法廷以外の場所で主張しているだけです。

 

 

 

これで決まってしまう。自動車産業における人件費の総額も以下のように計算できる。

 



小泉改革やアベノミクスは、国内市場は販売不振だった。海外の市場が良好で過去最高益だった。メリットを受けるのは株主ぐらいです。日本企業は、海外であげた過去最高益を海外に再投資して内部留保(利益剰余金)が増えている。トリクルダウンの起きようがない。

 

給料を上げたければ、国内での自動車販売台数や日本の自動車輸出の増加などが必要です。国内売上や輸出による売上もないのに、賃上げ要求なんてやっても微々たる効果しかない。残念ながら、これが実態です。

 応援のクリックをお願いします。
 



トラックバック