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保守主義イコール小さな政府か?



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「保守主義とは小さな政府のこと」なんです。こんな解説をする書き込みをネットで見かける。書いている本人は本気なんだが、読んでいる方は違和感を感じることが多い。

この問題の根本には、日本で保守主義の定義が明確になされていないことに原因ある。日本語版のwikipediaによると、保守主義とは「従来からの伝統・習慣・制度・考え方・新機軸などを穏健に尊重し維持するため、改革や革命などの革新に反対する社会的・政治的な立場、傾向、思想などを指す用語」です。英語版のwikipediaにも、同様のことが書かれている。保守主義(Conservatism)の説明に「保守主義は美的、文化的、社会的、政治的哲学であり、伝統的な社会制度を促進し、維持しようとしています。」(Conservatism is an aesthetic,cultural,social,and political philosophy,which seeks to promoto and to perserve traditional social institutions.)と書かれている。自動翻訳(Google翻訳)なので、訳者による意図的な誤訳はありません。
wikipediaの正確性はともかく、これが保守主義に関する一般的解釈と判断して間違いない。保守主義を「伝統的な社会秩序を維持しようとする政治思想」と定義することができます。

そもそも保守主義という言葉は、フランス革命に反対する側の言葉として使われ始めた。フランス革命を起こした側の自由主義とフランス革命に反対する側の保守主義は、もともとは対立する関係です。イギリスでも同様です。イギリスでも市民革命を起こした自由主義を革命派と呼び、のちの自由党です。革命に反対する側の保守主義を王党派と呼び、のちの保守党です。イギリスでは自由党と保守党の二大政党制が19世紀末まで続いた。

アメリカでは状況が異なります。アメリカ独立戦争で自由主義陣営の独立派が勝ちました。アメリカの建国の精神は自由主義です。ボストン茶会事件で重税に反対して独立戦争が始まったのだから、租税負担の小さな政府がアメリカの建国の精神です。この建国の精神を守ることが、アメリカの伝統的な保守主義です。アメリカでは保守主義の定義が普通の国とは逆になっています。アメリカでは保守主義が、小さな政府の自由主義です。

保守主義を「伝統的な社会秩序を維持しようとする政治思想」と定義することは可能です。しかし、保守主義の基準となる「伝統的な社会秩序」というのが、国によって異なります。従って、国によって保守主義の意味が違うことになります。

日本の「伝統的な社会制度」とはなんでしょう。間違いなく言えることは、天皇制を維持しようとする考え方は保守主義だということです。「個人よりも国益を優先しようとする考え方」も、日本の伝統的な考え方です。これは国益思想と呼ばれ江戸時代の儒教思想に由来する。こういうのが日本の伝統的な政治思想です。日本の保守主義に多く見られる考え方と言えるでしょう。

ヨーロッパ諸国で見られたように、日本の保守主義と自由主義は正反対の考え方です。自由主義では「国家が個人の人権を侵害することは許されない」との考え方です。「個人の自由よりも国益優先」なんて考え方を自由主義とは呼ばない。

江戸時代に基本的人権の尊重なんて考え方が日本にあったわけではない。戦前の日本で無制限な自由が道められていたわけではない。明治憲法では、「法律ノ範囲内」でのみ認められた。自由です。戦後の押し付け憲法で認められたものに過ぎかった。現在でも同じで、緊急事態条項を憲法に追加して、基本的人権よりも国益を優先しようとする人達が少なからずいる。基本的人権の尊重を、日本の伝統的な考え方と呼ぶのは無理がある。

とは言っても、基本的人権を尊重しながら、日本の伝統的な社会制度を維持しようとする人達もいる。こういう人達は保守自由主義と呼ばれている。

では、「保守主義イコール小さな政府」という奇妙な論理は、どこから出て来るのか。これはアメリカの保守主義の定義を、勝手に日本に持ち込んでいる。アメリカは小さな政府の自由主義が建国の精神で、この建国の精神を守ることが伝統的な保守主義です。小さな政府が日本の伝統的な社会秩序なんて事実はない。「レーガン政権やサッチャー政権が小さな政府を主張して保守主義と言われた。だから、小さな政府が保守主義である」なんて論理には無理がある。小さな政府が保守主義なのはアメリカの建国の精神であって、日本の伝統ではない。アメリカにとっては、小さな政府の自由主義が保守主義なだけです。

イギリスでは、自由党が20世紀に入って消滅し、保守党と労働党の二大政党制になった。イギリスでは保守主義の定義が変わる。伝統的な資本主義制度を維持するの保守主義であり、資本主義社会を批判する社会民主主義の労働党と対立する時代に移行した。

20世紀前半に少数政党に転落した自由党の一部は保守党に合流し、自由党の一部は労働党に合流した。だからイギリス保守党の中に、小さな政府の自由主義を主張する人達いる。サッチャーはそういう人物の1人です。

保守主義は「伝統的な社会秩序を維持しようとする政治思想」です。だから、大きな政府を主張する保守主義者もいる。小さな政府を主張する保守主義者もいる。例えば、戦前の日本は軍事支出額が多い大きな政府の保守主義でした。近年では、第二次安倍晋三政権が大きな政府の保守主義でした。

小さな政府の保守主義を志向したのは小泉純一郎政権です。小泉純一郎元首相を新自由主義と呼ぶ人が多くいます。彼は明らかに自由主義者ではない。なぜなら、小泉純一郎元首相は「個人の人権や個人の自由よりも日本の国益を優先する人物」で間違いない。これは自由主義や個人主義とは異質の考え方です。政治思想は国益優先で、天皇制などの伝統秩序を維持する思想の持ち主で、経済思想のみ小さな政府の自由な経済を志向していた。あえて言うならば、新保守主義(ネオコン)と呼ぶべきでしょう。


※2021年10月10日にマガブロで公開した記事を、再投稿しました。




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